先般閉会した市議会第2回定例会において、「憲法第9条の改定に反対する意見書」について提出者に若干の質問をした。文中に記載されている「2000万人のアジア諸国民、310万人の日本国民という多くの方々が犠牲になるなかで・・・」の数についてである。
度々提出されるこの類の意見書に良くこうしたた数字が引用されている。過去の歴史のなかでこうした犠牲者がいることをもとに、この数が使用されていることは十分承知している。ただし、歴史のなかで、事実でないねつ造された記事などにより、この戦死者の数が誇張されて表現されることには些か疑問をもっている一人である。
それが、えん罪に起因していたとしたら・・・ことは重大であり、日本国民の一人として毅然とした態度で問題に対処しなければならないと考える。昭和12年の南京戦において当時の東京日日新聞が「野田 毅 向井敏昭少尉が前線で中国兵を斬り倒し、百人斬りの戦争をしている」という戦意昂揚の創作記事を4回にわたり掲載した。戦後この記事が唯一の根拠になり、両少尉は昭和22年南京軍事裁判所で、捕虜・住民虐殺の罪で起訴され、即日判決の後、12月銃殺刑に処せられている。
その後に新聞や書籍でこの事件が紹介されたが、後の資料等から事実無根の記事であることが遺族らの手によって確認され、百人斬りに関する記述が、原告等遺族の名誉を毀損しているとして訴訟が起こされた。
この事件では3人の軍人が計500人の人を斬ったことになり、それぞれ「虐殺」の罪に問われている。事実無根の記事による処刑。アジア諸国民、日本人を含めての戦死者の数は真実であるのか・・・戦後60余年が経過し、様々な資料が発見され、歴史が紐解かれている。私は、質疑のなかで、向井敏昭 少尉、野田 毅 少尉の遺書を紹介させていただいた。
9条の考え方、捉え方はそれぞれあると認識しているが、こうした事件を直視せずに数を引いて意見書に記載するべきではないと考えている。尊い人命を犠牲の上に今の日本の繁栄がある。虚報により、今日まで我が国の国益が大きく損なわれているとしたら大きな問題である。先頃、衆議院議員 稲田朋美氏が「百人斬り裁判から南京へ」という書籍を出版している。この中には、遺憾ながらえん罪により処刑された両少尉の名誉回復への道程が詳細に記載されている。読み終えて何を感じるか、個々の心中に去来するものは想像に耐えない。